四国地方

116. 山口霊神社(やまぐちれいじんじゃ) 〜愛媛県松山市〜


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2024年の旅先は四国!
なんと四国は初上陸です。スケジュール的には愛媛2泊、香川1泊、帰りにちょっと徳島で1ヶ所寄り道。
坂本龍馬の高知も行きたかったけど、時間が足りないのでそれはまた次回に。

四国といえば八十八ケ所巡礼ですが、私の中ではそれよりも狸巡り!四国へ行ったらもう絶対これはマスト!
…というと、「狸巡りって何ぞや?」という方も多いと思うので、今回は皆様にお狸様のウンチクを自己満足で語りながら進めていきますねー。

出発の日は晴天に恵まれ、毎度ながら「さすが私」と自画自賛しながら気持ちよくフライト。

飛行機の羽の先についてるクマのイラストは、エア・ドゥのキャラクターの「ベア・ドゥ」です。
ベア・ドゥと一緒にまずは神戸空港に向かいます。
待ってろよ、神戸!

到着。
待ってたか、神戸。

神戸はちょっと曇り。
ここから三宮のレンタカー屋さんまで送迎バスで移動。

札幌から四国までは直行便もなく交通の便があまり良くないので、どのルートで、そしてどの乗り物で移動しようかかなり模索しましたが、選んだ方法は、

千歳空港

神戸空港でレンタカー手配
↓ (明石海峡大橋)
淡路島
↓ (鳴門大橋)
四国入り

四国へ入ってからは徳島・香川県を一旦華麗にスルーして愛媛の松山市に2泊した後、敢えてのしまなみ海道を渡って本州入りし、広島と岡山には降りずに世界最長瀬戸大橋から香川県入りするという、見る人によっては無駄な大外回りをします(笑)
前年、広島へ行ったものの、しまなみ海道は渡る時間がなかったので、四国へ来たついでに!ということで。あと伯方の塩工場へ寄って伯方の塩アイスも食べたかったし。それだけのためですよ。ええ。何か問題でも?
で、しまなみ海道を行って戻ってくるのもつまらないので、そのまま本州を経由して香川に入った方が時間的にも効率が良いし、瀬戸大橋渡って四国と本州を繋ぐ橋を制覇ちゃえ!というノリです。

今回はとにかくレンタカーで直走りました!
故に、有料道路代とガソリン代の合計がまあまあいい金額になりました(笑)
レンタカー屋さんに車を返す時にとても不思議な顔をされたのを鮮明に覚えています。
「この女さん、この数日でこんな途方もない距離を走って一体何をしてたんだろう…」みたいな顔を。

神戸空港から三宮までの移動の途中、キリンみたいな形の重機が聳え立っていました。
コンテナクレーンかな?

レンタカーGET。
さあ、ここ三宮から約3時間半ぶっ通しで走りますよー!

まずは明石海峡大橋

前方に淡路島の山が見えます。

はい、淡路島入り!

観覧車があるから遊園地でもあるのかと思ったら、サービスエリアの観覧車でした。
淡路島にも行きたい神社(淡路國一宮 伊弉諾神宮など)があったけど、日暮前に愛媛に到着したいから寄ってる暇はない!
いつか行ってやるからな!淡路島!淡路島も待っとけよ!

そして鳴門大橋〜。

鳴門大橋は短めなので、すぐに四国の東端が見えてきました。

空の青と鳴門大橋、めっちゃ綺麗やなー!

…あ!ていうか鳴門大橋だから渦潮が見れるはずだわ!

……見えねーーー!

あの白波が立ってる箇所がきっと渦潮だと思うけど、運転しながらであまりよそ見もできないし、なんなら橋の欄干と重なっててよくわかんない!

もう一度チャレンジして撮ってみたけど、もう進み過ぎちゃったみたい。徳島入っちゃう。さよなら渦潮。

鳴門西PA

四国上陸!!
神戸淡路鳴門自動車道が高松自動車道に切り替わった先の鳴門西PAでトイレタイム。
このまま高松自動車道を走ると香川の海岸をぐるっと大外回りして愛媛に入る羽目になるので、時短も兼ねてこの先の板野インターで降り、そのちょっと南を走る徳島自動車道へ藍住インターから乗り換えます。

神戸空港から愛媛の松山までのほぼ中間地点まで来た時に、「そういえばお腹空いてる」とお腹が空いてることに気が付いたので、吉野川SAの「よしの亭」で遅めのお昼ご飯。

徳島にいるので何か徳島っぽいものを…と選んだのが、こちらの徳島ラーメン

吉野川SA 徳島ラーメン

実は、私はラーメンを年に一度でさえ食べない人間で、そういうことを言うと、

「なんで!?ラーメン嫌いなの!?北海道なのに!?札幌の人なのに!?」

という”ラーメンを食べることが人類の営みである”かつ”道民、もっと言うと札幌市民は毎日ラーメンを食しているべき”かのような非国民に対するトーンで愚問を投げかけてくる100∨0思考の者がいますが(クチ悪い笑)、別に嫌いとかじゃなくラーメンの他に食べたいものがあったり、単に「ラーメンを食べよう!」というモチベーションがないというだけ。
恐らく12〜13年ぶりにラーメンなるものを食しました。

久しぶりに食べたラーメン、その一口で、この世にこんな美味しいものがあったことを想起し、脳神経へとダイレクトn……ってことは別にないですが、普通に美味しくいただきました。
今はラーメンは食べなくなったとはいえ、遥か以前は食べていたからラーメンがどんなものかはちゃんとわかっていますよ、ええ、わかっていますとも。
その上で徳島ラーメンの感想を述べますと、豚骨醤油ベースのスープと甘辛く煮込んだ豚肉、それだけでも札幌ラーメンの味がベースにある私としては美味しい変化球に思えるのだが、そこに落とされた生卵の黄身をを割ってラーメンと混ぜ合わせると、優しくまろやかなヴェールを纏っt……もういいですか?
とにかく美味しかったです!ご馳走様でした〜。

更に1時間半、車を走らせやっと愛媛の松山に到着!
3時間半も走ってきたので、流石に陽もだいぶ傾いています。

ホテルへ行く前に直で一発目の神社へ!
ここは山口霊神社(やまぐちれいじんじゃ)という、お狸様を祀る神社です。

札幌中心部の商店街、狸小路に古くからある本陣狸大明神社でお狸様が祀られているのを地元の人なら自然と目にしているので、札幌市民や札幌に頻繁に来てる方にとっては、お狸様を祀ることおにそれほど意外性を感じないかもしれません。
本陣狸大明神社のお狸様の名前はそのまま本陣狸大明神なのですが、その本陣狸大明神の両親は、実はここで祀られている八百八狸(はっぴゃくやたぬき)・隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)と、同じく松山にいる伊予の宮・瑠璃姫というお狸様夫妻の息子なのです!
お狸様にもちゃんと系図があるのがオモロ可愛いですよね。
そしてこの隠神刑部というお狸様、808匹の狸を従える、四国最強の神通力を持つ狸会の総大将として大変知られた存在なのです!(狸界隈で)
その息子が札幌にいるっていうんだから、当時それを知った時は私はときめきましたね。ええ。

また、ジブリ映画の『平成狸合戦ぽんぽこ』でも隠神刑部が活躍します。
同映画に出てくる太三朗禿狸の住処、屋島寺(香川県)、そして狸長老狸六代目金長がいる金長神社(徳島県)は実在していて、こちらの2箇所へも行ってきたので後日記事にしますね!

元々四国と狸ってどんな繋がりがあるのか、なぜ狐より狸なのか?そして稲荷神社が殆んどと言っていいほどないのはなぜか?
諸説あるようですが、恐らく一番有名なのは、”弘法大使(空海)による狐追っ払い説”じゃないでしょうか。
それはこんな内容です。

その昔、空海がいた時代、四国には狐と狸の両方が住んでいました。
ただ、この狐と狸、大変仲が悪くいつも揉め事が絶えませんでした。
特に狐については里の人にまで妖術を使ってイタズラをする始末。
困り果てた人々が空海に「なんとかならんか、あの狐どもは」と相談を持ちかけます。
暫し考えた空海が出しだ答えは、狐と狸を棲み分けさせることでした。四国から狐を追い出したのです。
「狐たちは本州へ行きなさい。瀬戸内海に鉄の橋ができるまでは四国へ帰ってきてはならん」
と言いつけました。
それ以降、四国から狐はいなくなり、狸だけが棲むようになりました。

というお話。
狐ってそんなに素直に言うこと聞くの?とも思うけど、四国最強の神通力を持つ隠神刑部率いる狸たちも手こずっていた狐を、言いつけだけで四国から追い出す空海ヤバ過ぎ。いちばん神通力ある。
ま、あくまでも説なので!ファンタジーも大切です。

不思議なことにこのファンタジー…説のわりには、狸神社以外にちゃんと讃岐國一宮田村神社などの普通の神社も巡ってきましたが、境内社とかに稲荷神社は見当たらず、空海説が俄かに真実味を帯び…てはこないけど、稲荷信仰が根付かなかったのは何か地形的な理由でもあるのかと思うぐらいでした。
瀬戸内を船で渡ることは、平安時代も戦国時代も江戸時代もそれほど難しくなかったとは思うんですが、なぜか稲荷神社がない。というか、狐様を眷属として連れ歩いてる宇迦之御魂神を祀る神社が見当たらない、というべきか…
代わりにお狸様を祀る(山口霊神社は正しくは”封印”)神社は、四国界隈のメジャーなとこでも10社近くあるし、その他にも神社仏閣の境内に小さな塚があるところも多くあるようだし、狸伝説も各地域に残されています。
その伝説の一つで恐らくもっとも有名なのが隠神刑部『松山騒動八百八狸物語』でしょう。

『松山騒動八百八狸物語』は、実際の松山藩のお家騒動を元にした”物語”です。
狸や妖怪の要素を加えた怪談話として江戸末期に人気を博しました。
あらすじとしては上の写真にある通り。(手抜き)

このお家騒動で隠神刑部は神通力を奪われ、棲みついていた大伽藍(御堂)も取り壊され、この久谷の洞窟に封じ込められてしまいます。
ですが後に、松山藩に対する隠神刑部のこれまでの功徳に免じて洞窟から解放され、同じこの場所で祀られることとなりました。

社殿

ここでちょっとした補足なのですが、日本というのは古来、祟りが信じられていた時代がありました。
平安時代を代表する怨霊of怨霊、日本三大怨霊として名高い菅原道真平将門崇徳天皇が神社で祀られてるのを見るように、神社というのは怨霊を鎮める(封印する)ために使われいたこともあります。
怖すぎるから結界を作って封じたり、逆に「その節はホントすみませんでした。お詫びにここに大切にお祀りするのでどうか怒りを鎮め、我々をお守りください」と虫のよいお願いをして祀ってみたり…
それがいつしか太宰府天満宮のように学業の神様としてバズっちゃったりする菅原道真の存在も、時代の変化と人々の良い意味での身勝手さによって生まれた状況ですね。

基、”祟り”そのものはあるのか否か。
”祟り”とは罪を犯して誰かを葬った人が罪悪感で抱くもの(罪悪感によって何か悪いことがあると怨霊のせいって思うようになる心理)と私は解釈していますが、「悪いことをしたら自分に返ってくる」というこの日本人特有の精神が生まれたのはこの御三家による”祟り”(ていう思い込み)がキッカケだったのではないかと考察しています。

社額

隠神刑部に話を戻します。
先の御三家同様に、あまりにも強い神通力をもつ隠神刑部の祟りを恐れて、その死後にここに祀ったと考えるのが妥当ですが、いやいやよく考えてみたらこれ元は創作の物語やんっていう。
実在していなかった隠神刑部、いつしか語り継ぐ人々が”実在”させてしまったパターンがなんとも興味深いですね。

いえ、でも創作物語だとしてもお家騒動はあったのは事実で、当時の空気が感じられるようなお話でもあります。

ところで、空海に「鉄の橋ができたら戻ってきてもええよ」って言われた狐さんたちはどうしているのでしょうか?
稲荷信仰よりもお狸様信仰が強くなってしまって、さらに隠神刑部みたいな脅威的なハイパー狸がいたのなら、狐たちが戻ってきたところで狸勢力を覆すことは難しいでしょうし、なんか考えただけでしんどいですよね。
あの喧嘩に明け暮れた時代から1200年以上も経ち、鉄の橋も鳴門大橋、瀬戸大橋、しまなみ海道と3つもできたけど、未だ狐がこの四国に戻ってきてる気配がないのは「今更戻ってイチからってのもアレだし、別にこっちに稲荷神社めっちゃ作ったし、もうこのままでもいいわ…」という諦めの気持ちもあるのでしょうか。

いや、だから創作だから。

「あおばよく ひかりあまねき
やまぐちのかみのこころを あがめまつらん
さかもとのさとをしずめて やまぐちのふかきめぐみぞ やすけかえらん(穏やかであろう)
はっぴゃくやたぬきつかえて じひふかくこのよをすくう やまぐちれいじん
はるくれば みさか(三坂=地名)のやまの うぐいすも
ふかきちかいの やまぐちれいじん」

お社の横に隠神刑部と思しき大きな石像が。
おいなりさんが立派!おいなりさんのサイズと霊力は比例するのでしょうか?
『平成狸合戦ぽんぽこ』隠神刑部は犬に近い風貌で描かれていますが、こちらの石像もそれに寄せたのか、逆にジブリがこっちに寄たのか、犬っぽい風貌の石像となっています。

酒瓶を傍に置いて…よく見たらここにも小さなお狸様が!

お社の逆サイドにもカップルのお狸様。

入り口の4体のお狸様も個性的で可愛いです。

左のお狸様から。

みんなそれぞれ愛嬌がありますよね!

私が一番好きなお狸様はこの右の色つきお狸様。
人々の祈りや想いや念とかってのは、量子力学的に可視化できないものとしてその場に溜まったり、物質に影響を与えたりすることもあるのかもと思いますが(そういう意味では祟りもないとは言えない)、このお狸様だけは正気を感じなくもない。あの立派なおいなりさんをぶら下げた隠神刑部らしきの石像よりも。

「八百八狸の碑」と書かれた石碑の周りにもお狸様。

しがらき狸学会という会があるんですね。
木彫といえば北海道の木彫の熊でしょ〜なみに、信楽焼といえば滋賀の信楽焼の狸でしょ〜っていう信楽では、狸の焼き物は「たぬき」→「た抜き」→「他を抜く」→「競争相手を出し抜く」という意味を込めた商売繁盛の縁起物として親しまれています。

お狸様たちの後ろ姿、なんともいえない可愛さがありますな。

以上、四国狸巡りのスタートとして相応しい、ハイパー狸の隠神刑部を祀る山口霊神社のご紹介でしたー!



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